効果的な就業規則で労使トラブルを回避!

2024.03.18

就業規則

 
松林 大樹 コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。

従業員と企業が円滑な関係を築くために、就業規則は非常に重要な役割を果たしています。
本記事では、従業員と企業の権利義務を明確化し、トラブル回避に役立つ就業規則の意義と効果を解説します。
また、記載内容や作成のポイント、適用範囲と対象者、作成・変更手続きと法定届出、周知方法や運用上の留意点についても詳しくご紹介します。
本記事が、中小企業の経営者や役員、人事労務担当者にとって、効果的な就業規則作成の参考になれば幸いです。
さらに具体的な内容については、見出しに沿って説明していくので、ぜひ一読してください。

【 目 次 】

  1. 就業規則とは?その意義と効果
  2. トラブル回避に役立つ就業規則の重要性
  3. 就業規則の記載内容と作成のポイント
  4. 就業規則の適用範囲と対象者
  5. 労働組合の役割と就業規則適用の関係
  6. 就業規則の作成・変更手続きと法定届出
  7. 就業規則の周知と運用上の留意点
  8. まとめ

就業規則とは?その意義と効果

就業規則とは、企業の働く従業員に対する取り決めを定めたルールで、労働条件や勤務体制、休日・休暇や賃金、退職に関する事項など、業務遂行に関わる基本事項を記載しています。
重要な意義は、経営者や従業員が共通の認識を持ち、円滑な労働環境を築くことができる点です。さらに、トラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。

具体的な効果としては、以下が挙げられます。

– 従業員に対する取り決めを明確にして、トラブル回避
– 労働環境の改善を促進
– 従業員と企業の信頼関係を構築

労働基準法では、常時10人以上の従業員を雇用する事業場で、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられており、以下の項目を必ず盛り込むことが求められます。(絶対記載事項)

– 労働時間に関する事項…始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など
– 賃金に関する事項…賃金の決定、計算および支払の方法及び支払の時期と場所など
– 退職・解雇に関する事項

これらのルールは従業員の権利を守り、企業側の義務も明らかにするため、どのような業務内容であっても遵守することが重要です。

トラブル回避に役立つ就業規則の重要性

トラブル回避に役立つ就業規則の重要性を理解することは、円滑な労働環境の実現に欠かせません。
就業規則が明確であれば、以下のようなトラブルを防ぐことができます。

– 従業員と企業間のトラブル、例えば賃金未払いや休暇取得を巡る問題
– 従業員間のトラブル、例えばいじめや嫌がらせ
– 労働基準法違反による労働局や労働組合からの問題提起

就業規則の整備は、従業員と企業が共に安心して働ける場の構築に役立ちます。

就業規則の記載内容と作成のポイント

就業規則は、会社と従業員の間で働く上でのルールや制度を明確化し、トラブルを未然に防ぐために重要です。
まず、基本となる事項を整理し、その後具体的なルールや条件を記載していきましょう。また、作成する際には、法律や規定に適合した内容にすること、わかりやすい表現で記載すること、社員に周知させる方法を用意することがポイントです。
労働基準法やその他の法令に違反しないよう、社会保険労務士などの専門家に相談しながら作成すると安心です。

  1. 賃金・勤務時間・休暇等の基本事項
    賃金や勤務時間、休暇などの基本事項は、従業員が働く上での基本的な条件を示すため、非常に重要です。
    賃金に関しては、基本給と各種手当、昇給の方法や計算方法、支給日を記載しましょう。
    勤務時間については、始業・終業時間や休憩時間、労働時間の管理方法を明確にしましょう。
    また、休日や休暇については、週休日数や有給休暇の取得方法、特別休暇や産休・育休などの各種休暇制度について記載することが求められます。これらの事項を適切に記載することで、従業員が安心して働ける環境を整えることができます。
  2. 労働条件変更と退職・解雇に関する規定
    労働条件の変更や退職・解雇に関する規定は、会社と従業員の間でトラブルが起こりやすい部分です。
    労働条件の変更については、変更の理由や手続き、通知方法を明確に記載しましょう。
    退職に関しては、退職の手続きや届出期間、退職金の支給条件などを定めましょう。
    そして、解雇に関しては、解雇の事由や手続きを具体的に示し、法的に適切な内容にすることが重要です。
  3. 事業所ごとの特殊事情に対応した内容の盛り込み
    事業所ごとの特殊事情に対応した就業規則の盛り込みは重要です。
    それぞれの事業所で発生する問題や課題に対処するために、業務内容や従業員の状況に応じた規定が必要です。
    例えば、特定の業務においては、独自の安全衛生対策が必要になることがあります。
    また、労働時間や休憩時間、休日の取り扱いも事業所ごとに異なる場合があります。
    事業所ごとに特殊事情に対応するためには、次のようなポイントに注意を払って盛り込みましょう。

    – 事業内容に応じた労働条件の設定
    – 管理に手間がかからないのか?システム活用で管理できる制度かの検討
    – 日頃問題になりがちな問題解決を円滑に進めるためのルールの策定や見直し
    – 法令遵守のための監督体制の整備。システムなどのハード面から、教育を含めたソフト面まで。
    – 社内制度の遵守状況の確認方法や評価基準
    – 他社で起こっている問題をもとにルール策定

   

就業規則の適用範囲と対象者

就業規則は、会社の従業員に対してルールを明確に伝えるためのものです。
適用範囲と対象者を明確にすることは、従業員とのトラブルを防止する上で重要です。
適用範囲は通常、全社員を対象にしていますが、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、働く形態によって別途適用される就業規則を設けることをお勧めします。

適用範囲と対象者を明確にするためには、次の点に注意しましょう。

– 正社員と異なる働き方がどのような内容か、違いを一覧に整理する。
– 正社員を基準に、会社全体で適用されるルールを最初に決める。
– 部署や業務ごとに適用される特別なルールを確定する。
– 働く形態や待遇によって適用されるルールを確定する。

これらの情報を正確に把握し、就業規則に反映させることで、従業員に適切なルールを周知することができます。

労働組合の役割と就業規則適用の関係

労働組合は、従業員の代表として働く存在で、賃金や労働条件、職場環境の改善を目指します。
企業と労働組合が協力して、適切な労働環境を築くことが重要です。
労働組合は、従業員の権利や待遇を守るために、就業規則の策定や改定に関与します。

具体的な役割は以下の通りです。

– 労働条件の交渉と労働協約の締結
– 従業員の意見や要望を企業側に伝える
– 労働紛争の解決に努める
– 従業員の福利厚生や健康安全の向上に寄与する

労働組合が組織されている場合、企業は就業規則の適用にあたり、労働組合との協議が必要になります。労働組合は、従業員の声を反映させ、企業と共同で改善策を検討します。
会社によっては、労働組合と連携して社会保険労務士事務所を利用し、専門家の意見を取り入れることもあります。
労働組合と企業が協力し、従業員の満足度向上や生産性の向上に繋がる労働環境を整えることが大切です。

就業規則の作成・変更手続きと法定届出

就業規則は、従業員の就業に関する事項を定めたものであり、改定には手続きが必要です。

  1. 細心の注意を払った変更方法
    就業規則の変更は、従業員の権利や待遇に関わるため、細心の注意を払って行う必要があります。
    まず、変更の理由と具体的な内容を明確にし、従業員や労働組合と十分な協議を行いましょう。
    また、一部の変更だけで全体のバランスが崩れる可能性があるため、すべての項目との整合性を確認しましょう。
    変更の際は、法令違反にならないように注意し、労働基準監督署による指導や助言を受け入れて対応しましょう。
  2. 厚生労働省への届出手続きと注意点
    企業は従業員に対して変更内容を周知徹底します。
    次に、従業員の過半数を代表する労働組合や、組合がない場合は、過半数を代表する者と協議を行います。
    協議が行われ、組合、または代表者の意見の記載の後、変更内容を記載した書類と意見書を、労働基準監督署に提出します。
    変更が承認されたら、企業は変更後の就業規則を事業所に掲示し、従業員に対して周知徹底します。

就業規則の周知と運用上の留意点

就業規則は、従業員と企業との間の基本的なルールを定めるものであり、適切な周知と運用が求められます。
まず、就業規則を常時閲覧できる場所や社内ネットワークで共有し、終業時に、保管場所を共有するなどし、従業員に周知させましょう。
また、定期的に改訂や点検を行い、常に最新の情報が従業員に伝わるようにしましょう。

運用上の留意点としては、以下のようなことが挙げられます。

– 従業員の意見や疑問を適切に聞き取り、解決策を提案する
– 法令や社会の変化に対応した適切な変更手続きを行う
– 規則に違反した場合の処分や指導方法を明確にし、公平な運用を行う
– 従業員一人ひとりが遵守すべきルールを理解し、実践できるように教育・研修を行う

これらの点を確認し、適切な運用を行うことで、トラブルを防ぎ、従業員と企業の良好な関係を築くことができます。

  1. 社員への周知方法と確認手段の活用
    社員への周知方法としては、以下の方法が効果的です。

    – 新入社員研修や定期的な研修による教育
    – 雇用契約書に就業規則の保管場所を明記し、サインをもらう
    – 社内ネットワークでの情報共有
    – 掲示板や社内報での周知
    – 経営者や管理職が就業規則を実践し、模範となる

    確認手段としては、定期的なチェックやアンケート調査が有効です。
    また、トラブルが発生した際には、原因となった就業規則の遵守状況を確認し、再発防止策を講じましょう。
    適切な周知方法と確認手段を活用することで、従業員一人ひとりがルールを理解し、遵守することができます。
  2. 順守度を高めるコンプライアンス体制構築
    コンプライアンス体制を構築することで、順守度が高まります。その理由は、コンプライアンス体制が適切に監督・指導され、従業員がルールを理解しやすくなるからです。
    コンプライアンス体制が整っている企業は、労働時間・賃金・休暇などの管理が適切に行われ、トラブルが減少するというメリットがあります。
    社会保険労務士事務所を活用することで、適切なコンプライアンス体制の構築が可能です。社会保険労務士事務所は、労働法や社会保険に関する専門知識を持っており、企業のニーズに合ったアドバイスやサポートを提供できます。
    まとめると、適切なコンプライアンス体制を構築することで、順守度が高まり、企業全体の業務効率や法令遵守が向上することが期待できます。

まとめ

効果的な就業規則を策定することで、以下のメリットが生まれます。

– 社員の職場環境が改善され、働きやすさが向上
– 労使間のトラブルが減少し、円滑な人事労務管理が実現
– 法令遵守が強化され、企業の信用が高まる

また、社会保険労務士事務所と連携して効果的な就業規則を策定することで、企業は適切な労働環境を整え、法令遵守を図ることができます。
お悩みがあれば、コステム社会保険労務士事務所までお気軽にご相談ください。

関連記事