退職月給与計算の全手順と注意点解説

2024.03.21

給与計算

 
松林 大樹 コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。

退職月の給与計算について、退職月特有のこれまでの給与計算とは異なる点や注意すべきポイントがあります。
この記事では、退職月の給与計算の基本から注意点、具体的な計算方法まで詳しく解説していきます。
退職月の給与計算には、通常とは異なる社会保険料控除や所得税・住民税の計算が発生するため、適切な計算方法や手続きが必要です。
この記事を参考に、退職月の給与計算に関する課題や疑問を解決し、中小企業の経営者や人事労務担当者たちが円滑に業務を進められることを目指しています。
ぜひ最後までお読みいただくことで、退職月の給与計算に関する理解を深めていただければと思います。

【 目 次 】

  1. 退職月の給与計算の基本と注意点
  2. 退職月の給与計算方法: 一覧と解説
  3. 退職月の所得税の計算
  4. 雇用保険料の最終月の扱い
  5. 退職月の給与計算まとめ

退職月の給与計算の基本と注意点

退職月の給与計算は通常の月とは異なるルールがあります。
計算期間の途中で退職の場合は、給与は日割りで計算されるため、退職日数を加味して必要な計算が行われます。
また、退職に伴う手続きには注意が必要です。

具体的には、以下の点に注意しましょう。

– 勤務日数や時間による賃金の計算
– 退職日に応じた社会保険料の控除
– 住民税の異動手続き

退職日による給与計算は、会社の就業規則により計算方法が異なります。

  1. 勤務日数や時間による賃金の計算
    計算期間の途中で退職の場合、出勤日数を加算する計算方法なのか?所定労働日数に不足する日数分を減額する計算方法なのか?の確認が必要です。
  2. 退職月の社会保険料控除の特徴
    健康保険(介護保険)、厚生年金保険を社会保険といいます。退職月の社会保険料の控除は、通常の月と異なります。
    社会保険の保険料は、被保険者資格を喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで控除が必要です。

    例1:月末締め。翌月20日払い(保険料も翌月控除)
       1月15日に退職の場合

    社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日の1月16日となります。
    保険料は、資格喪失した日の属する月の前月分まで発生します。
    12月分の保険料は、1月支給の給与から控除しているため
    1月1日から1月15日までの給与が2月20日に支払われますが、社会保険料の控除は行いません。


    例2:月末締め。翌月20日払い(保険料も翌月控除)
       1月31日に退職の場合

    社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日の2月1日となります。
    保険料は、資格喪失した日の属する月の前月分まで発生するため、
    1月分の保険料を、2月20日支給の給与から控除します。

  3. 住民税の異動手続き
    住民税は、前年の所得を基に計算されます。会社は、従業員に対して前年の所得に基づいて計算された住民税を、毎月の給与から徴収する役割を担っています。この住民税は、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類の徴収方法があり、給与からの源泉徴収は特別徴収にあたります。
    1月から5月に退職する場合‥会社を退職する際に、最後の給与(または退職金)から一括で残りの住民税を控除します。
    6月から12月に退職する場合‥従業員は住民税の納付について、3つの方法から選択することができます。①会社に特別徴収から普通徴収に切り替えてもらう。②最後の給与(または退職金)から一括で残りの住民税を控除してもらう。③次の会社が決まっている場合、次の会社で特別徴収を継続する。

退職月の給与計算方法: 一覧と解説

退職月の給与計算方法は、通常の給与計算とは異なります。退職月の給与は、以下の方法で計算されます。

– 日割り計算法
– 時間外手当など割増賃金
– 賞与

それぞれの計算方法を解説します。
日割り計算法は、基本的な退職月の給与計算方法です。退職日までの日数に応じて給与を計算します。
時間外労働手当は、退職月における残業時間に応じて支給されます。
賞与は、会社の規則により支給される場合があります。

  1. 日割り計算法: 基本的な退職月の給与計算方法
    日割り計算法は、退職月の給与計算方法の基本です。複数の計算方法があり、計算方法は、会社の就業規則を確認するようにしてください。この記事では、日給月給制で、退職日までの延べ日数に応じた給与を計算する方法を案内します。。
    具体的には、月給をその月の延べ日数(例:30日)で割り、1日あたりの給与額を算出し、退職日までの延べ日数を掛けます。
    例えば、月給30万円の社員が、6月15日に退職する場合、給与額は、(300,000円 ÷ 30日) × 15日 = 150,000円となります。
    記事に記載した方法以外にも、平均所定労働日数をもとに日額を計算する方法や、その月の所定労働日数をもとに日額を計算する方法があります。
  2. 時間外手当など割増賃金の扱い
    割増賃金については、まず、時間外労働には、労働時間を超えた労働に対して支給される時間外手当や休日手当、深夜手当があります。これは、通常の賃金に加えて支給されるもので、労働基準法や就業規則で計算方法が定められています。
  3. 賞与
    賞与に対する社会保険料は、原則、支給される賞与から控除します。
    ただし、退職月に支給される賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料の控除対象になりません。

退職月の所得税の計算

退職月の所得税の計算は、給与所得の金額に応じた税率で計算されます。
具体例として、以下の手順に沿って説明します。

1. 税率と、所得控除額を確認
2. 総給与から所得控除額を引いて給与所得を求める
3. 給与所得に税率を適用して所得税額を計算

さらに、所得税は源泉徴収されるため、給与から控除します。

雇用保険料の最終月の扱い

退職月の雇用保険料の扱いについては、通常の雇用保険料と同じ方法で計算されます。重要なポイントは、退職日に関係なく、退職月の給与から雇用保険料を控除することです。

退職月の給与計算まとめ

退職月の給与計算では、労働時間や、社会保険料、税金の控除など、多くの要素を考慮し、正確な計算が求められます。
注意点に対応するためには、人事労務管理ソフトやサービスの活用がおすすめです。また、退職者に対して詳細な計算内容や手続きを説明することで、納得感を得られる結果が期待できます。

さらに詳しい情報や質問があれば、コステム社会保険労務士事務所までお気軽にお問合せください。

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