有給休暇5日取得義務化!企業と従業員の実践ガイド

2024.03.15

有給休暇

 
松林 大樹 コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。

働き方改革法が施行され、有給休暇の5日取得義務になってから数年が経過しましたが、今でも法律の解釈やルールを誤っている相談があります。そこで、今回は、有給休暇取得義務化をテーマに取り上げ、企業と従業員が実践できるガイドを作成しました。
この記事では、年5日の有給休暇取得義務化の概要から始め、対象となる従業員や付与日数について解説します。
この記事を読むことで、効果的な有給休暇制度の運用や働き方改革への対応方法について理解を深めることができます。
お役立ていただければ幸いです。

【 目 次 】

  1. 年5日の有給休暇取得義務化の概要
  2. 有給休暇の付与日数や対象従業員
  3. 企業が知っておくべきポイント
  4. 取得権発生のタイミングと基準日
  5. 罰則に関する注意点と対策
  6. 企業が取るべき予防策と改善方法
  7. 労使協力による有給休暇制度の成功事例
  8. まとめ

年5日の有給休暇取得義務化の概要

有給休暇取得義務化は、労働基準法に基づく制度であり、従業員の健康や生活の質を向上させることを目的としています。
従業員の労働時間や働き方改革に対応するため、厚生労働省は年次有給休暇を年間5日以上取得することを義務付けました。
この取得義務化は、正社員や年10日以上有給休暇が付与されるパートアルバイトなど非正規雇用者などの従業員に適用されました。
この法律により、企業は従業員に有給休暇を付与し、1年に5日取得する対象者の条件や手続きを明確に定める必要があります。
厚生労働省は従業員の働き方改革を促進するため、この取得義務化を通じて、従業員の労働時間の削減や過労防止を目指しており、結果的に労働生産性の向上や企業経営の安定化を図ることができます。

有給休暇の付与日数や対象従業員

有給休暇の付与日数は、従業員が入社してから6か月経過し、その間に80%以上出勤した場合に、初年度の勤続日数に応じた日数が付与されます。例えば、勤続日数が6か月から1年6か月の場合は10日、1年6か月から2年6か月の場合は11日、2年6か月以上の場合は最大20日が付与されることになります。対象従業員は、正社員だけでなく、非正規雇用者やパートタイム従業員も含まれており、企業は従業員全員に対して適切な有給休暇の取得管理や付与条件を整備しなければなりません。

(パート・アルバイトの有給休暇についての詳細な記事は‥パート・アルバイトの有給休暇の実態

企業が知っておくべきポイント

従業員に対して有給休暇を付与する義務がある企業は、以下のポイントを把握して、適切な管理を心掛けることが重要です。

– 有給休暇が付与される基準日
– 社員の種類(正社員、嘱託社員、パート・アルバイト、契約社員など)に応じた対応
– 休暇日数の計算方法と労働時間の確認
– 制度の運用上の注意点や違反に対する罰則
– 効率的な休暇管理や消化率向上策の導入
– 労使協定やルールの変更・改革への対応

企業はこれらのポイントを踏まえて、社員の働き方改革や健康管理に配慮した有給休暇制度を運用すべきです。

取得権発生のタイミングと基準日

有給休暇の取得権発生のタイミングは、従業員が入社してから6ヶ月間の出勤日数が所定労働日数の80%以上であった時です。
その後は、基準日ごとに休暇日数が更新されます。
基準日は原則、入社6ヶ月後は、その1年ごとの日が基準日となり、付与された有給休暇の時効は2年です。
企業は、このタイミングと基準日を把握し、従業員が有給休暇が失効しないように注意を払う必要があります。
パート・アルバイトや契約社員など非正規雇用の従業員に対する有給休暇の取り扱いも注意が必要です。
パート・アルバイトについては、先に書いたとおり、労働時間や週の就業日数によって付与される休暇日数が異なります。
企業は、これらの条件に応じて適切な休暇日数を設定し、従業員が利用しやすい環境を整えることが求められます。
有給休暇は従業員の権利であり、企業も積極的な取得促進が求められます。

企業が行うべき計画的な取得支援策には以下の方法が挙げられます。

– 休暇取得の状況を社内で透明化し、人事部門が適切な対応を行う
– 労働時間の把握と適切な休暇計画の作成を支援するシステムの導入
– 社員同士の業務引継ぎを円滑に行える体制の整備
– 業務負担の軽減策や、労働時間の見直しを行う
– 育児や介護がある特定の従業員だけが有休を取得するのではなく、管理者を含めた全員の取得率の目
標値を決めて、取り組む。
– 業務の属人化の廃止に向けて取り組む。

また、以下の取得促進策も効果的です。

– 指定日の有給休暇取得制度の導入
– 社員のメンタルヘルス対策としての意識付け

企業は社員の働きやすい環境を整備し、計画的な取得支援策に積極的に取り組むことが重要です。
従業員側も、自身の休暇消化状況を把握し、計画的に有給休暇を利用することが求められます。具体的には以下の点があります。

– 労働時間を適切に管理し、継続勤務や過労がない状態にする
– 有給休暇取得のタイミングを事前に検討し、上司や同僚に伝える

以上の方法で、従業員と企業の双方が取得促進に努めることが求められます。

罰則に関する注意点と対策

有給休暇取得促進に関する違反が発覚した際、労働基準監督署は、まず指導や勧告を行います。
しかし、企業が改善に応じない場合は、罰則が適用されることがあります。
具体的な罰金額は、法律で定められており、以下の通りです。

– 有給休暇の年5日取得の義務を怠った場合: 30万円以下の罰金

その他にも、

– 労働法違反が発覚した場合、企業の評判や信用に大きな悪影響を与える
– 従業員の健康を脅かす状況が続けば、労働災害の発生にもつながる

対策としては次のような点が挙げられます。

– 労働時間の正確な管理と適切な労務管理の実施
– 社内の労働環境や職場風土の改善
– 法律を遵守し、適切な休暇取得促進策の実施
– 従業員と企業双方が、有給休暇取得の重要性を理解し行動する

これらの注意点と対策を踏まえ、企業は今後も有給休暇取得促進に取り組むべきです。

企業が取るべき予防策と改善方法

企業が有給休暇の適切な管理と違反を防ぐためには、以下の予防策と改善方法が効果的です。

1. 有給休暇管理システムの導入: 労働時間や休暇取得状況を一元管理することで、従業員の休暇取得を適切に把握し、違反を未然に防ぐことができます。
2. 社内ルールの明文化: 有給休暇の取得方法や期間、対象者などのルールを明確にし、全社員に周知徹底させます。
3. 労使協議の実施: 従業員側からの意見や希望を取り入れた制度を検討し、双方の理解に基づく良好な休暇環境を整えます。
4. 罰則の周知: 違反時の罰金額や労働基準監督署の対応を社員に伝え、違反のリスクを意識させます。

これらの予防策と改善方法を実施することで、企業は従業員の健康と働きやすい環境を整えることができます。

労使協力による有給休暇制度の成功事例

労使協力による有給休暇制度の成功事例として、以下のような取り組みが挙げられます。

1. 社員の働き方改革: 業務の効率化や属人化の廃止により、特定の従業員だけでなく、誰もが有給休暇の取得が容易になる環境を作る。
2. 経営陣とのコミュニケーション強化: 経営陣と従業員が一体となって、有給休暇や労働環境の改善策を協議する。
3. 有給休暇取得促進の呼びかけ: 従業員に対して定期的に休暇取得の重要性を説明し、理解・活用が進むよう努める。
4. 労使間の信頼関係の構築: 企業と従業員が相互に尊重し合い、より良い労働環境の実現に向けて協力する。

以上のような取り組みを行うことで、企業は従業員の有給休暇取得率を向上させ、働く人々の健康と働きやすい環境を実現することができます。
従業員側と経営者側の積極的なコミュニケーションは、労働環境の改善や働き方改革の推進に欠かせない要素です。
理由は、双方の意見やニーズが共有され、理解し合うことで、企業の労働環境や制度に適切な変更が図られるからです。
また、従業員側が積極的に意見を伝えることで、企業は働き方改革を進める上で重要なポイントを把握し、効果的な施策を実施することができます。
従業員側と経営者側のコミュニケーションが円滑に行われることは、企業の経営改善や働く社員の満足度向上にも繋がります。

まとめ

効果的な有給休暇制度の運用と働き方改革は密接に関連しており、従業員側と経営者側の積極的なコミュニケーションが重要です。
企業は労働環境の改善や働きやすさの向上を目指す上で、有給休暇取得率の向上を働き方改革の一環として取り組むことが求められます。
従業員側は計画的な休暇取得を行い、企業と協力して働く環境改善に努めることが望まれます。
今後も働き方改革の推進を目指す企業や従業員にとって、有給休暇制度の適切な運用は重要であり、従業員側と経営者側の連携が欠かせません。
効果的な有給休暇制度の運用と働き方改革に関するお悩みは、お気軽にコステム社会保険労務士事務所までご相談ください。

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