初めて従業員を雇用する企業向けの給与計算ガイド

2023.12.26

給与計算

 
松林 大樹 コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。

初めて従業員を雇用する企業にとって、給与計算は新たな挑戦です。
給与計算は、毎月勤怠を締めてから、支払日までに短期間で実施しなくてはいけませんし、従業員からは、間違えずに出来て当たり前と思われ、ミスをすることが許されない業務です。
しかし、計算そのものは単純ではなく、色々な法律知識や制度の理解がないと出来ません。
この記事では、初心者にもわかりやすい給与計算のプロセスと、よくある間違いを避けるためのポイントを提供します。

【目次】

  1. 給与計算の基本
  2. 効率的な給与計算のヒント
  3. ミスを防ぐための対策

給与計算の基本

給与計算は、従業員の勤務時間や休暇などに基づいて、給与を計算するプロセスです。

  1. 労働時間の集計
    ・タイムカードやデジタル勤怠システムを利用して、正確に勤務時間を集計します。
    ・残業や休日出勤の時間計算
    ・遅刻や早退、欠勤の時間計算
    ・有休や忌引きなどの休暇の管理
  2. 社会保険料、所得税、住民税など法律で定まっている控除額の計算
  3. 給与の支払
    ・銀行振込や現金支給の方法で実行します。
  4. 退職時の特別な手続き
    ・源泉徴収票発行
    ・給与所得者異動届

効率的な給与計算のヒント

  1. シンプルなルールの設定
    複雑な勤務体系や、手当などの設定を行わず、シンプルでわかりやすいルールを設定します。
  2. 雇用区分を複雑にしない。
    正社員と契約社員、準社員などとあまり意味もなく雇用区分を増やさない。
  3. 計算期間を十分に確保する。
    締め日と支払い日の間隔をあまりタイトにしすぎないようにする。
  4. 年俸制を設けない。
    従業員個人と合意したと、年俸制として、時間外手当や休日手当を違法に払わないのは後々トラブルになることが多いです。
  5. 就業規則を作成する。
    ・従業員が少ない場合も、ルールを定め、規程にしておくことで、記憶に頼らず、言った言わないなど余計なトラブルを防ぐことができます。
    ・欠勤や遅刻早退があったときの控除のルールも曖昧にせず、就業規則に規定しておくことで、間違いを防ぐことができます。
  6. 書類の保存ルールを決める。
    ・労働条件通知書や、扶養控除申告書など書類をどこに保存しておくのか?のルールを決めておくことで給与計算に必要な情報の漏れを防ぐことが出来ます。
  7. WEB給与明細の導入。
    ・紙で印刷し、封入する作業は従業員が増えてくると、煩雑でミスも起こりやすくなります。
    また紙を配布するために、社長の時間もあける必要があります。
    早い段階でWEB明細を導入することで、明細の封入時間や、明細を渡す時間の削減効果があります。
  8. 管理表の作成
    思いつきで計算をするのではなく、管理表に基づいて計算をしましょう。
    毎月の実施事項はもちろん、月ごとで必要な作業、入退社での注意点、変更事由による対応、産休育休者の管理など網羅した表を作成しましょう。
  9. クラウド勤怠管理システムの導入
    タイムカードを手で集計したり、Excelで集計するとミスが発生しやすいです。クラウド勤怠管理システムを導入し、自動的に時間集計できるようにしましょう。
  10. 給与は振込で。現金支給を辞める。

ミスを防ぐための対策

  1. 複数のチェック体制を設ける。
  2. 法律の改正や変化の情報をキャッチする方法を決める。
  3. 管理表を都度修正し続ける。

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